金曜日の午前中、私はそわそわしていた。
H3ロケットの打ち上げが予定されていたからだ。
H3ロケットとは、現在の日本の基幹ロケットであるH2A、H2Bの後継となる新型ロケットだ。
当初の予定では2年前に打ち上がる予定だったはずだが、さまざまなトラブルで延期が相次いでいた。
それがようやく打ち上がるのだ。
日本の宇宙開発は米、中、欧、露に大きく遅れをとっている状況なので、これを機に盛り上がっていってほしい。
そう思いながら、私は在宅勤務の合間に、YouTubeの公式ライブ配信を見ていた。
数分前からカウントダウンが始まり、いよいよリフトオフ。
しかし、飛ばなかった。
リフトオフの合図から数秒後に画面には"1段メインエンジン燃焼停止"という文字が映って、違和感を覚えた。
1段エンジンってこのタイミングでは止まらなくない?と思いながらしばらく見ていたら、煙がしぼんでいった。
(今思えば、ロケット内のコマンドorテレメトリがリアルタイムでライブ中継と共有されているってすごいな。いろんな意味で)
どうやら、メインの液体ロケットエンジンは無事作動したものの、補助役である固体ロケットエンジン(SRB)がなんらかの理由で作動しなかったらしい。
期待してただけにショックだったが、これを"失敗"と捉えるか、"中止"と捉えるかで世間では議論となっているらしい。
メディアによって、見出しの書き方が違うようで、"失敗"と記載しているものもあれば、"打ち上がらず"と記載するだけに留めているものもあるようだった。
JAXAは公式発表で"中止"と延べていて、"失敗"とは言わないようにしていた。
これが世間で議論になっているらしく、「打ち上がらなかったんだから失敗だろ」とか、「ロケットや衛星は壊れてないんだから中止でしょ」とかいろいろな意見があるようだった。
JAXAの公式会見で、どうしても"失敗"ということにしたい、とある記者の態度が失礼極まりない、という、また別の議論も生んでいた。
正直思うけど、この議論どうでもよくないですか?
"中止"と捉えるか、"失敗"と捉えるかで、今後の対応が変わるんですか?
JAXAも三菱重工もこの"打ち上がらなかった"という事実に真摯に向き合い、原因を究明し、今後再挑戦への準備を進めることになんら変わらない。
別に"中止"や"失敗"のラベル付けそのものには意味はないと思う。
その二文字だけで、今後の予算編成を決めるようなことはしないわけで。
更に言うと、このような大規模プロジェクトは、様々なシステムの集合なわけで、それぞれに対しての達成未達成の基準はあるはずだが、「達成が何個以下なら失敗」みたいなゼロイチの世界ではないと思う。
あとは個人個人がどう捉えるかの話で、それを皆で一律に決めようとしている姿勢には違和感しかない。
こんな不要な議論に時間を使わずに、どうしたら日本の宇宙開発を発展させられるかを議論しましょうよ。